会社で正社員として働く人は、入社時に会社と雇用契約を結んでいます。会社ごとの違いはありますが、契約書を交わすのは契約書に書かれた内容に同意いたという意味です。もしも会社から人事異動の内示がでたら、社員はそれに従います。内示にもルールがあって、そのルールにも従うことになります。まだ内示を受けたことがない人に、内示とはどいうものでどう対処したらいいかなど役立つ知識を紹介します。
人事異動の内示の意味とは?また時期は?
内示の意味とは?
人事異動における内示は、就職で言うと内定のようなイメージです。移動する部署が今の部署とは遠く離れた場所にある場合は、引越しなどもしないといけません。単身者なら引越しなどの面倒な手続きはありますが、身軽な分異動もそれほど影響はありません。しかし家族が居る人の場合、子供の学校の問題や家族全員の引越しとなると、準備にも時間がかかります。人によっては内示を聞いてガッカリな人もいます。
入社時に転勤がある仕事とわかっていても、勤務地や住む場所が変わるというのは想像以上に大変なこともあります。いつかそうなるとわかっていても、実際に移動になり環境が変わるのは精神的にも負担になりがちです。そういう負担を少しでも軽減できるように、事前に知らせておくのです。
会社やサラリーマンをテーマにしたテレビドラマや映画で、社内の掲示板などに紙が貼られそれを見て皆がざわつくというシーンが出てきます。これが辞令というものです。辞令から10日後に人事異動発令書が交付されます。
内示の時期は?
会社による違いや急に退職者が出たなど、その時の状況に応じて内示の時期は変わってきます。一般的な内示は辞令が出る1か月前ということが多いです。慎重に且つ重要な意味を持つ人事異動の場合は、2か月前という早い段階で出す内々示というのもあります。本人だけに伝えるので、ほかの人には知らせません。内示は口外禁止となるので、いくら仲がいいからといって同僚にペラペラ喋っていいものではありません。辞令が出ればその時点で社員にも知らされます。
急に人が辞めてしまい早急に人材を確保しなければいけないような部署では、求人募集をするよりも社内でほかの部署から誰かを異動させるということもあります。この場合1日でも早く補充する必要があるため、内示から数日後には辞令が出て異動になるということもあります。こういう例は稀ですが、一般的には大体1か月前に内示を出すようにしています。
内示が出たらしたいこととは?
①上司への挨拶
内示は聞いた瞬間に飛び上がりたくなるような光栄な内容や、正直嬉しくない内示もあります。本来あってはならないことですが、上司や会社側からの明らかな嫌がらせという場合を除いて、内示を受けたら上司に挨拶をするのがマナーです。内示は個別に告知されるのでどこか別室に呼ばれて話を聞きます。その場に上司が居るならそこで挨拶を兼ねて一言お礼を言っておくといいでしょう。上司もよほど険悪な雰囲気でない限り、部下に挨拶されるのは嬉しいものです。
②異動理由の確認
異動理由が納得出来る内容だと会社も自分を評価してくれたとわかりますが、残念ながらそうでない場合もあります。内示を言い渡される時には、異動に関する詳細もある程度伝えられます。いい内示の場合は伝える方も気兼ねしないのでそのまま話します。仕事ができないから無難な部署に飛ばされるというような時はハッキリ言いにくいので遠まわしな言い方をすることが多いです。内示を受けたらまず異動理由はハッキリさせておきましょう。話をする時に理由を質問すれば答えてくれます。理由を聞いておけばその後受けるかどうかを判断するので、その時に判断材料になります。
ただし移動理由を聞いたところで、それに納得できないとしても大抵は内示通りに異動します。ここでくじけてやけになるか、踏ん張って見返すかが個々の受け止め方やその後の行動で変わってきます。僻地の部署に飛ばされるというと左遷のイメージが強いですが、腕を見込んで経営不振を立て直すために駆り出されることもあるので、必ず理由を聞いておきましょう。
③内示の詳細を確認
内示を受ける時には、口外していいかどうかも説明があります。暗黙の了解という部分もありますが、会社の規則でも内示を受けたことは口外禁止となっているところが多いです。禁止と言われたらそれを知っている上司以外は知りませんから、いかなる理由があっても口外してはいけません。
異動があることを早めに知らせた方が会社にとって都合がいいなら、内示があったことを話しても構いませんと言われます。しかしOKだからといって合う人全てにペラペラと喋ってしまうようではあまりいいイメージは持たれないでしょう。OKであっても伝えるのはお世話になった先輩や同僚など限られた人だけにしておきます。
④異動先への挨拶
内示から辞令までは少し時間がありますが、その間にやることは山ほどあります。移動先にも上司はいますから、正式に異動になる前に挨拶を済ませておきます。ただし今の上司の立場も考えないといけませんから、自己判断で勝手に新しい上司に挨拶するのはNGです。必ず今の上司と相談し、最初に今の上司から新しい上司へ挨拶をしてもらいます。その時に改めて部下が挨拶に行くと伝えますので、都合のいい日を決めて挨拶をします。
挨拶については上司同士の話が済んだら一旦電話かメールで簡単な挨拶をしておきます。その時に先方の都合のいい日を聞いておくとスムーズです。挨拶は上司と、自分が担当していた取引先の人全てにもしておきます。挨拶のタイミングはそれぞれに違いますが、社内で自分の仕事に携わっていた人や取引先の人にも異動になることを伝えておきましょう。これをしておかないと、周囲の人も混乱してしまうからです。いつまで担当出来るのか、後任者の名前などもきちんと伝えておくのがマナーです。
⑤引継書について
異動する前には、今自分がやっている仕事を誰かに引き継いでもらわないといけません。一応口頭でも説明しますが、引継書があればそれを見ながら説明できますし、後任者もわかりやすくなり双方にメリットです。ただし引継書は処分されるのが前提なので、あまり細か過ぎないこと、量が多くならないことを心がけましょう。要点のみのシンプルなものでOKです。
⑥次の上司の確認
新しい上司に挨拶を済ませていても、その上司の人となりまではわかりません。ただしこの場合新しい上司にどんな人なんですか?と聞くわけには行かないので、プロフィールなどをチェックする程度です。簡単な情報でも全く知らないよりは、少しでも情報を持っておいたほうが何かと安心です。もしも直接聞けそうな人がいたら、聞いておくのもいいかもしれません。
異動の内示が出た時に注意したい口外マナー
注意点①原則辞令までは口外禁止
ほとんどの会社では口外禁止となっています。口外禁止なのは辞令が出るまでのことが多いですが、そういう決まりがある以上は従うのがマナーです。内示にも種類があるので、中には信じたくない内示もあります。どうしても納得がいかない場合は、断るという選択肢もありますが、原則拒否はできないことになっているので、最悪会社を辞めるというケースもあります。
ただし実際のところは、本人が口外しなくてもなんとなく噂で広まっています。自分が口外していないなら噂があっても無視していれば大丈夫です。自ら口外してしまうと、品格を疑われかねません。内示の時に口外しないよう注意があったらそれに従います。
注意点②開示してもいい場合
会社によっては内示の時に、内示を受けたことを開示してもいいと言われることがあります。この場合に注意しておきたいのが、開示してもいいと言われたからといって、皆に伝えなさいという意味ではないことです。たとえ開示OKでも、伝えるのは限られた人にとどめておきましょう。誰に伝えるかは自由ですが、可愛がってくれた先輩や仲がいい同期数人くらいがベストです。言いにくい内容の場合は無理に言わなくてもいいですが、先輩を差し置いて昇進するというような場合は、自慢しているように受け取られる可能性があるので注意してください。
内示が出た時にうまくやりたい引継ぎ
基本的に引き継ぎは一緒に仕事をしながら、言葉で説明します。全くの新人ではない限り、ポイントを覚えればすぐに新しい仕事をこなせるようになります。引継書の作成も必要ですが、同じ仕事でも人によってやり方は違いますから、自分流を押し付けすぎないように注意しましょう。
引継書はシンプルイズベストです。仕事の概要を簡単にまとめておけば、後は後任者が自分なりのやり方を見つけてこなして行ってくれます。仕事に関わってくる重要な人物がいるならそれが誰であり、どんな役目があるのかを伝えておきます。人物に関しては引継書には書かず口で伝えましょう。
内示が出てもそれが口外禁止という場合、後任者にいきなり引き継ぎを始めたら言葉では言わなくても内示を受けたので異動しますと、行動でバレてしまいます。しかし早めに引き継ぎを終えておかないと、自分が異動するまでに後任者が仕事を覚えていないという事態になりかねません。これについては、内示を受けた時に自分で確認をとっておきます。直属の上司が内示を受けたことを知っていれば、上司に引き継ぎをどうすればいいか、いつから開始すればいいかを相談して指示を仰ぎましょう。挨拶についてもそうですが、デリケートな問題も絡んでくるので引き継ぎを必要とする場合も開始するタイミングは必ず上司に相談して決めてください。自己判断では思わぬトラブルを起こすこともあるからです。
引き継ぎを開始する時期が遅れると、完全に引き継ぎできていないのに異動しなければいけないということもあります。しかし会社側から絶対に内示は口外しないよう厳しく言われているような場合、引き継ぎを開始するのもギリギリになってしまいます。実際にろくに引き継ぎをしないうちに異動になるというケースは少なくありません。後任者には出来るだけ迷惑をかけたくないと考えますが、会社の方針である以上従うしかありません。この場合は残念ですが、残された時間で引き継ぎをすることになります。すぐに後任者との引継ぎができないとしても、引継書を作成しておくことはできます。開示OKになった段階ですぐに引継ぎが開始出来るよう、その前に出来ることをやっておけば少しはマシです。
内示を断るとどうなる?
人事異動の辞令を出す前に内示として伝えるのは、本人に考える時間を与えるとか、心の準備をする時間を与えるという理由があります。人事異動と言っても人によってその後の人生を左右することもあります。昇進や栄転なら名誉なことですが、必ずしもそうであるとは限りません。仕事ができない人は左遷されることもありますし、本当はここで仕事を続けたいのに会社のためにと異動を命ぜられることもあります。
一応内示の段階では法的効力はありません。異動理由に納得できない場合は断ることもできます。ただし会社側がそれを受け入れるかどうかは別の話です。拒否しても、会社側はそれを認めません。内示は拒否する権利はあっても、実際にはそれを認めてもらえないのが現実です。なんとなくモヤモヤしてしまいそうですが、そういう仕組みになっている部分は否めません。
内示を受けた時、それが契約違反になるような場合は正当な理由があるので拒否できます。会社側も契約書に違反するような人事異動を命ずることはできません。他にもいくつか会社が内示拒否を認めなければいけない例外があります。
例外①契約書の内容と違う場合
入社時に交わした契約書に、勤務地と仕事内容が限定され記載されている場合は、会社は契約内容以外の勤務地に異動させると違反になりますし、契約書に記載がない仕事をさせることもできません。異動内容がこれに該当する場合、社員は拒否できますし拒否されても会社はそれを認めないといけないのです。
例外②明らかな嫌がらせ
上司が気に入らない部下がいるからと、個人的な理由で部下を異動させることはできません。いくら会社側の立場の人間でも気に入らないからクビということはできません。クビにできないから本人から辞めるよう仕向けるために、敢えて嫌がらせとわかるように仕事がきつい部署に異動させたり、ほとんど仕事がない部署に異動させたりすることがあります。
これについては判断が難しく証拠を集めるのも難しいのですが、会社からの嫌がらせであると証明出来た場合は内示を拒否できますし、会社側も規則違反になります。実際にこういったケースは意外と多いのですが、それをきちんと証明できないこと、裁判になっても会社はいろいろ理由を付け正当化するので、よほどのことがない限り泣き寝入りするしかありません。この場合拒否すると余計風当たりが強くなる可能性が高いので、思い切って転職を考えてみるのも選択肢の一つです。
例外③家庭の事情
家族に介護が必要な人がいたり、生まれたばかりの赤ちゃんがいたりすると、その社員がいないと面倒を見る家族がいないという場合があります。異動の場合は引越しのことも考えておかないといけません。仮に引越しが可能であっても、今より負担が増え仕事にも支障が出るような場合は、内示を拒否できます。
要介護の人家族にいてもヘルパーさんなどに頼めば、仕事に行くことはできます。移動先が海外の場合は、いくらヘルパーさんがいても要介護の家族を置いて海外には行けませんからこういう場合も内示を拒否できます。
ただしこの場合は一方的に拒否するだけでなく、会社側もサポート体制を整える準備があれば応相談ということになります。生まれたばかりの赤ちゃんや乳幼児がいるという場合は、会社内に託児所を用意することもあります。
内示の落とし穴
内示を受けた社員は断る権利が与えられています。しかし会社がそれを受け入れるとは限りません。一応内示を受けた時に、異議申し立てをするならいつまでにと日にちを指定してきます。納得いかない内示の場合異議申立はできますが、会社が意義を認めるのは正当な理由があった時だけです。
ここでいう正当な理由というのも実は曖昧で、正確には会社がそれを持ち出されると都合が悪い内容ということです。一応断る権利があるとしていますが、実際には正当な理由と会社が認めない限りは拒否しても、ほとんど強行突破で辞令が出るというのが実際のところです。辞令は会社からの命令ですから従わないと業務命令違反となってしまいます。
内示と辞令はどう違う?
人事異動に関しては内示と辞令があります。どちらもよく似ているので、イマイチ違いがわからないという人も多いのではないでしょうか?はっきりとした内示と辞令の違いを説明するのは難しいかもしれません。
違いで一番大きいのが、それぞれが持つ言葉の意味です。内示は打診という意味あいがあります。会社から人事異動について考えこういう案が出ているが、異動してもらえますか?というような感じで話をされます。事例を出す前に本人に今後の予定として考えておくよう伝えます。一応内示の段階では、断るという選択肢も与えられます。内示を受けた本人も、人事異動について自分や家族への影響などを考えることができます。ただし表面上は決定ではないものの、ほぼ決定しているようなものです。
辞令は社員にお伺いを立てるのではなく会社命令ですから、これに従わないとペナルティが課せられます。会社が決めたルールですから、社員として働く以上断ることができません。人事異動は誰よりも異動する本人が精神的なショックやプレッシャーが強くなります。それが名誉なことであっても、急に環境が変わるのですから不安や戸惑いがあるのは当然です。
そのため事前に内示というステップを設け、準備をさせる時間を与えます。内示を受けた段階では断るという選択肢があります。しかし最終的にどうするか決めるのは会社です。殆どの場合有無を言わさず辞令となるので、内示が出たら例外を除いて、異動せざるを得ないといっても飯倉です。両者は言葉も意味も違いますが、大まかには同じようなことです。
内示をきっかけに転職するのもあり?
内示を受けたら異動はほぼ決まったようなものです。例外はありますが、社員都合では断れない命令というのが一般的です。それでもどうしても辞令に納得できず、なんとかしたいという場合は思い切って転職するのもありです。今の仕事を続けたいという場合は、意に反することになりますが、自分がやりたい仕事ができないというなら転職するのもいいでしょう。実際に内示を断ってもそのまま辞令が出ることの方が多いです。社員にとっては生活に影響する重大なことでも、会社にとっては関係ないことなのです。
仮に内示を受けそれに納得できないからという理由で、転職を前提に会社を辞めるのは全く問題ありません。会社側も一応引き止めることありますが、辞令には従えないので辞めるといえばそれ以上引き止めることはしません。これを駆け引きに使うのはおすすめできません。会社としては辞令に従って欲しいところですが、社員が拒否して異動するくらいなら辞めます!という度に内示を取り消しているとキリがないからです。
会社によってその社員を失うのが大きな痛手になるという場合は、話し合いの余地もありますが、一社員ではなかなかそうはいかないでしょう。納得できないなら、辞めてもらって構わないとするしかありません。
内示を理由にした転職をする場合会社はどうする
内示に納得できない場合は、内示を受けた時に指定された期日までなら異議申立ができます。一応会社は受理しますが、それで内示が取り消されるわけではなく、予定通り約1ヶ月
後には辞令が出ます。どうしても異動したくないなら、それを理由に転職するということもできます。実際に転職する人はたくさんいます。
会社もある程度社員が拒否することは想定していますが、既に決まっているようなものですから社員が辞めるとなれば人が足りなくなります。内示を理由に転職する場合、少なからず会社や取引先の人には影響が出ることは忘れてはいけません。
内示によっては嫌がらせではないか?と思えるような内容もあります。しかしそれを言っても通用しませんので、辞めるなら早めに転職先を探しましょう。辞めるまでには時間がありますので、仕事の引き継ぎはきちんとしておきます。強引に辞めるようなことをすると、転職先にも悪い噂が広まる可能性があるので、結果的に自分が困ることになる可能性があります。納得いかない内示でも一応今まで働いていた以上、辞める時は筋を通して辞めるのがおすすめです。
転職のタイミングは?
内示をきっかけに転職する場合、いつから転職出来るのでしょうか?これについても会社の規則があるので、退職届を提出する期間が決まっているならそれに従います。規定については会社ごとの違いもあるので、契約書を確認しいつまでに退職届を出すかを確認しておきます。会社の規則に退職届を出す期間が記載されていない場合は、退職する2週間前までと法律で決まっていますので、最低でも2週間前には退職届を提出しておきましょう。
一旦仕事を辞めてから転職先を探すか、引き継ぎ期間中に同時進行で転職先を探すこともできます。仕事を辞めると収入が途絶えます。正社員なら失業保険ももらえますが、それもずっとではありません。退職後のリスクを減らしたいなら、退職する前に転職先を探しておくと安心です。可能なら退職後すぐに働けるようにしておきましょう。
内示とは?時期はいつ?気を付けたい口外マナーや断るとどうなるか?のまとめ
内示は人事異動の前に本人にだけ伝えられるものです。これからこういう辞令が出るので心得ておくようにという意味です。時期は会社によって違いもありますが、大体決まっています。内示についてもいくつかマナーがありますので、それを知らないと社会人として恥をかくことになってしまいます。内示は予想出来ることもありますがほとんど突然です。明日は我が身かもしれません。そういう時もどう対処すればいいかを知っておくと安心です。