損失回避性とは?損を避ける行動心理のマーケティング活用・克服方法も紹介

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損失回避性とは、人は得をするより損を回避する心理が働きやすいという心理学用語です。この、損失回避性はマーケティングなどあらゆる場面で使われます。損を回避する心理とはどんなものでしょうか?克服方法も合わせて紹介したいと思います。

目次

この2択ならあなたはどっちを選ぶ?

突然ですが質問です。あなたは、次のような2択があった場合どちらを選びますか? A「この携帯電話を契約すると5万円得します」 B「この携帯電話を契約しないと5万円損します」 この究極の2択の場合、Bの「この携帯電話を契約しないと5万円損します」を選んだのではないでしょうか?意味的には同じなのに不思議だと思いませんか? 実は、これには「損失回避性」という人間心理が潜んでいるのです。

損失回避性とは?

実は人には「得をするより損を回避する」という性質があります。先ほどの例でいうと、「5万円損をする」という感情が「5万円得をする」という感情に勝ったため、Bの選択肢を選ぶという心理になったのです。 思い返せば、お金を「得たときの喜び」と「損したときの悔しさ」を比べると、「損したときの悔しさ」の方がずっと覚えていて、強く残るということありませんか?これも、損失回避性の影響によるものです。 また、この人間の「損失回避性」を語るうえで不可欠な理論に、「プロスペクト理論」というものがあります。プロスペクト理論について少し紹介していきたいと思います。

プロスペクト理論とは?

プロスペクト理論とは、「人は利益を得られる場面ではリスク回避を優先し、損失を被る場面では損失回避をする傾向がある」という人間の心理に基づいた理論です。プロスペクトとは、日本語で「予想、期待、展望」などの意味があり、「未来を予見する」という意味で付けられました。 行動経済学者のダニエル・カーネマン氏が展開した理論で、2002年にこの理論でノーベル経済学賞を受賞しています。ビジネスを中心に、様々な場面で使われている理論なのです。

プロスペクト理論の実験

プロスペクト理論では、いくつかの実験が紹介されています。ここで、実験の一例をご紹介します。例えば以下のような2択の場合、あなたはどちらを選ぶでしょうか? A「100%の確率で100万円もらえる」 B「コインを投げて表が出れば200万円もらえ、裏が出れば何ももらえない」 この場合、人はAを選ぶ傾向にあります。先ほどご紹介したように、「利益を得られる場面ではリスク回避を優先する」という心理から来ています。 では、次に前提として、200万円の借金があった場合、このような2択があればいかがでしょうか? A「100%の確率で100万円減額となり、残り100万円だけ支払う」 B「コインを投げて表が出れば支払いなし、裏が出れば200万円全額支払う」 この場合、Bを選択する人が多い傾向にあります。これは「損失を被る場面では損失回避をする」という心理が働いています。 このように「プロスペクト理論」は様々な実験で実証されているのです。

人は得をするよりも損をしたくない

「損失回避性」という言葉は、ご紹介した「プロスペクト理論」から来ています。この実験でからもわかるように「人は得をするよりも損をしたくない」という性質があるのです。

損失回避性の具体例

それでは、「損失回避性」にはどのような具体例があるのでしょうか?3つのパターンについて紹介していきたいと思います。

【恋愛編】

恋愛においても、損失回避性が関わってきます。新しい恋人を作るのは非常に幸せなことですが、別れるときの痛みはそれ以上に辛いものです。たくさんのお金と時間を使うと余計に別れづらくなります。 このような場合、新しい未来への期待より、今まで時間やお金を費やしてきた恋人を失ってしまうという方が人は心理的に回避する傾向にあるのです。なかなか恋人と別れられない人は、損失回避性が働いていると言っていいでしょう。

【ビジネス編】

ビジネスの場面でも、損失回避性が働く場面があります。例えば、企業の新規プロジェクトでは、時間とお金をかけてきたのになかなか成果が上がらないということも少なくありません。 そんな場面でも、一度立ち上げたプロジェクトをなかなかやめられずにさらに時間を使ってしまうということもあります。いつか成果が出ると言いながら、惰性で無駄な時間を使ってしまうこともあるのです。お金だけでなく、時間の損失も痛いですよね。

損失回避性はなぜ起こる?

では、損失回避性はなぜ起こるのでしょうか? それは人が生き残る上で「損を回避する能力」を進化させたためと考えられます。食うか食われるかの狩猟時代においては、油断が命取りとなります。 そこでは損(危険)を回避・高く見積もることが生きていく上で何より重要です。そして危険を最小限にするよう努力しつつ手に入れたものを失わないこともまた重要となります。 このような背景で損失回避性を人間は持つようになったと言えるでしょう。

損失回避性から派生した「現状維持バイアス」および「保有効果」

損失回避性から派生した心理用語として「現状維持バイアス」や「保有効果」があります。 現状維持バイアスとは、人は大きな変化を避け、できるだけ現状維持を選択するという心理が働くというものです。これは、現状が変わると「なにか失うかもしれない」という不安が働き、現状維持を選んでしまうというものなのです。 保有効果とは、所有しているものに高い価値を感じるというものです。例えば、ぬいぐるみを買うとだんだん愛着が沸いてきて、手放しにくいと感じたことはありませんか?人には一度手にしてしまうと手放すのが辛いという心理が働いているのです。

損失回避性の活用方法[マーケティング]

損失回避性を使って、顧客の購買意欲を大きく引き出すことができます。マーケティングの現場では、損失回避性を使った戦略が多く使われていますのでいくつかご紹介したいと思います。

スーパーの特売

スーパーの特売などには、損失回避性が使われています。例えば、「期間限定半額」などのうたい文句で特売がされているとき、つい買いたくなりませんか?これにも「損をしたくない」という心理が働いています。 特にタイムセールなどは、「あと30分で高い金額に戻ってしまう」という心理が働きます。なので、時間の限定性を付けることで「損失してしまう」という気持ちが高まり、購入に至るケースも多くあります。

ポイントカード

ポイントカードでも、損失回避性を使うことができます。例えば、1年前から貯めていたポイントカードのDMが届き、「あと1ヶ月で失効します」と書いていたらどうでしょうか?最近行っていない店だけどポイントがなくなるから立ち寄ってみようという経験はあるはず。 実店舗もそうですが、特にネットショップなんかはメールでこのような案内があると、ついついいらない買い物をしてしまいがちです。これも損失回避性を使った企業のマーケティング戦略の一つでもあるのです。

損失回避性を克服するには?

ビジネスなどでも良い決断をするためには、損失回避性を克服することが必要です。克服するにはどのような方法があるのでしょうか?ご紹介したいと思います。 1つは「期待値を数値化」するという方法です。冷静な判断をするためには合理的な情報が必要です。そのため、期待値を計算することで感情と選択を切り離し、冷静に判断することができるのです。 もう1つは「ルールを決める」という方法です。絶対的なルールを作ってしまえば、選択に感情を淹れず判断できるので間違った選択を回避することができるでしょう。

損失回避性を克服して正しい判断ができるようになろう

損失回避性は時として、人のベストな判断を鈍らせてしまうこともあります。ですが、損失回避性のことを知り、克服することで正しい判断ができるようになります。 人生にはいろいろな選択の場面があります。時として、その選択一つで人生が大きく変わるということもあるのです。なので、正しい判断ができるよう、正しい知識を身に付けてはいかがでしょうか?

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