セルフハンディキャッピングとは?原因と克服方法を心理学的に徹底解説

  • URLをコピーしました!

セルフハンディキャッピングとは自分が失敗したときに備えて言い訳を考え、心理的な防御を行うことです。試験前の勉強中にいきなり掃除を始めたことありませんか?実はこのような行動は理由があります。そんな、セルフハンディキャッピングの原因と克服方法を紹介していきます。

目次

テスト前に人はやたらと掃除をする?

テスト前、追い込まれた時に限って掃除をしてしまいませんか? 誰でも一度は経験したことのあるこのような行動は、セルフハンディキャッピングという、心理的な作用による現象なのです。

セルフハンディキャッピングとは?

試験前の勉強中に掃除をすることによって、本番に失敗しても「失敗したけど、勉強する時間がなかったからしょうがない」という言い訳作りができます。 セルフハンディキャッピングの特徴としては、あえて自分が不利になるような行動をし、言い訳を事前に用意しておくことで、失敗しても落ち込まずに済む自己防衛となります。

セルフハンディキャッピングの種類と具体例

セルフハンディキャッピングには、「獲得的セルフハンディキャッピング」と「主張的セルフハンディキャッピング」の2種類のタイプに分けることができます。 それぞれどのように違うのでしょうか?特徴や具体例を挙げていきます。

獲得的セルフハンディキャッピング

獲得的ハンディキャッピングとは、優先的にやるべき仕事や試験前に、普段しないような掃除やゲームを始めることで、ハンディキャップを作り出すことを言います。 優先的にやるべきことへの妨害を行い、実際に状況を作っておくことで自らハードルを上げることになります。そして、成果が出ない、成績が悪かった場合に言い訳ができるようにします。わざと自分の足を引っ張り、失敗するように仕向けることになります。

学生編

試験前の勉強中にゲームや掃除をやり始めることは、獲得セルフハンディキャッピングの代表例です。勉強には関係のないことをすることで、自ら勉強しない状態に持って行きます。 試験の結果が悪い場合「勉強する時間がなかったから」という言い訳ができ、良い結果の場合「勉強する暇もなかったのに、良い結果がでた!」という自己評価を上げることができます。 どちらの結果にしても、自分が傷つかないような行動をしているのです。学生の方であればよくある心理現象です。

社会人編

獲得的セルフハンディキャッピングは、学生だけではなく、社会人でもよくある心理現象です。掃除やゲーム以外に、大仕事の前日にアルコールを摂取する、大量の仕事を請け負うなども獲得的セルフハンディキャッピングの一例として挙げることができます。 また、仕事を多く請けることで失敗した際に「仕事量が多すぎてできなかった」という言い訳ができ、成功した際は「仕事量が多かったのに、成果が出せた!」と自尊心を保たれることになります。

主張的セルフハンディキャッピング

主張的セルフハンディキャッピングとは、言語的に予防線を張る行為です。獲得的とは違い行動的なものではなく、周囲の人間から評価を下げないように、自ら評価を下げるような発言をすることです。 試験前に「全然勉強してない」や「今日ほとんど寝てない」「この科目苦手だから」と言っている人を見かけませんか?このような発言をしておくことで、自分の能力に保険をかけることになります。 実際に結果が悪い場合「やっぱり苦手な科目だから」という言い訳ができ、良い結果だった場合、「苦手な科目なのに凄いね!」と周囲の評価を上げることになります。

恋愛編

主張的セルフハンディキャッピングは、恋愛面でも働く心理です。恋人がいない人が「仕事ばかりで恋愛どころじゃない」という発言をしていますが、実はこれも自己防衛の一つとなります。 「仕事ばかりで恋愛どころじゃない」という主張は、「恋愛はしようとすればできるけど、仕事が忙しいから」という言い訳をすることで恋人ができない理由がつき、周囲を言い聞かせることになります。 仕事以外にも、趣味を大切にしたいから、出会いがないから、という言い訳も主張的セルフハンディキャッピングに当てはまります。例えば「周りに良い人がいないから恋人ができない」と言えば環境のせいにすることができます。 そうすれば、自分に恋人ができない原因があるという印象を持たれることなく「この人は恋愛できない環境にいるんだ」と思わせることができます。

人間関係編

主張的セルフハンディキャッピングは、人間関係の様々なシーンでも使われています。勉強以外でも、自分で作った絵や作品を披露する際に「素人が作ったものですが」「大した作品ではないのですが」という発言も当てはまります。 他にも、初対面の人に対し「私はコミュニケーション能力がないから」と言っておきながら、話してみると円滑なコミュニケーション能力を発揮し、楽しい会話ができる人もいます。 評価がついたり、否定される恐れのある物事には主張的セルフハンディキャッピングはよく使われるということです。人間関係において嫌われたくない、悪い印象を与えたくないという自信のなさから反映されています。 人と関わるということは、どうしてもお互いの印象を気にしてしまうものです。そして結果的に好印象を与えたいがために日常会話のなかでも、主張的セルフハンディキャッピングが多用されているわけです。

セルフハンディキャッピングの原因は防衛機制?

セルフハンディキャッピングには、自分のプライドを守るために防衛機制が働きます。防衛機制とは、他者からの評価を下げたくない、自尊心を保ちたいという不安な気持ちから発生し、無意識に逃げ道を作る心理が生じることを言います。 これらはストレスからの自己防衛であり、つまり言い訳という自分のための予防線を張ることで起きます。そんな防衛機制のメカニズムについて探っていきましょう。

防衛機制とは?

防衛機制とは精神分析の用語であり、自分の中にある受け入れたくない状況(不安や葛藤)を避けるために、無意識に起こるメカニズムです。 防衛機制といっても様々なメカニズムがあります。受け入れがたい状況を忘れようとする「抑圧」、不安・不快な考えを避けることを「抑制」、自身の中に抑圧した感情が他人が持っているように感じるのが「投影」です。 不安や葛藤がある状況から逃げ、苦しい状態から逃げ出すことが「逃避」です。困難な現状から逃げ出す、空想に逃避する、問題とは関係のない現実に逃げることをします。 その他にも「昇華」「合理性」「退行」「知性化」「置き換え」「同一化」「反動形成」「補償」が防衛機制として挙げることができます。

セルフハンディキャッピングは自分を守る心理作用

耐えがたいストレスがある現実から逃げ出すことで、自分の心を壊さずに防いでくれます。どんな悪い結果であっても、何か理由をつけることができれば不安やストレスといった、心の負担が軽減されます。 そのため、自らセルフハンディキャッピングを行い、自分自身のメンタルを崩さないように働きかけていくのです。

セルフハンディキャッピングのメリット・デメリット

セルフハンディキャッピングには、メリットとデメリットがあります。誰の心の中にもある心理作用なので、メリットもあればデメリットもつきものだということを、理解しておくことをおすすめします。

メリット

試合や試験で良い結果が出せなかった時、「体調不良だったから結果が出せなかった」という言い訳ができます。このような発言をしておくことで、自分に能力がなかったという自己嫌悪に陥ることなく、自尊心を傷つけることがありません。 また、逆に成果を発揮した場合も「ハンディキャップがあったのにもかかわらず、上手くいった」と自尊心を高めるだけでなく、他人からの評価も上がることになります。

デメリット

一方、デメリットもあります。セルフハンディキャッピングを習慣化してしまうことで、本来の自分に背を向けることになります。劣等感を和らげるためにずっとセルフハンディキャッピングを使っていては、挑戦する意欲が削れてしまいます。 優先的にしなければいけないことを、後回しにする癖がついてしまっては努力を怠る体質になってしまいます。

セルフハンディキャッピングはデメリットの方が大きい

短期的に見てみると、セルフハンディキャッピングはメリットが大きいように感じます。しかし、長期的に見てみると、デメリットの方が大きいのです。 自分自身と向き合わずに、現状を言い訳だけで過ごそうとしては、最終的には何も残りません。一時的にプライドや世間体を守れたとしても、持続性があるとは言えません。 セルフハンディキャッピングは誰にでもある心理作用ですが、習慣化してしまっては自分のためにならないということが分かります。

セルフハンディキャッピングを克服する方法は?

そこで、セルフハンディキャッピングを習慣化しないために、克服する方法があります。世界のプロテニスプレーヤーである錦織圭選手もセルフハンディキャッピング癖があり、コーチであるマイケル・チャンさんのトレーニングによって克服をしました。 そんなセルフハンディキャッピングを乗り越えた錦織圭選手のように、克服方法を紹介していくので、ぜひ参考にしてみて下さい。

「自分にはできる」と言ってみる

セルフハンディキャッピングの原因は、自分の能力を認めていないことから始まります。そういった不安から言い訳をする心理が働きます。 そんな時は思い切って「自分にはできる!」と言ってしまいましょう。言葉にすることで「できる」と思い込み、行動へと繋がります。成功することを周囲へ宣言しておくことで、失敗した場合のことを考えずに集中力がアップします。 「できない」という言い訳から「できる」に変えていきましょう。

成功した時の理由を用意する

セルフハンディキャッピングとは逆の思考を働かせてみましょう。失敗した時の言い訳を作るのでなく、成功した時の理由を考えましょう。 成功した理由を具体的にイメージをすることで、より成功への意欲を高めることができます。宣言だけではなく、成功した時のセルフイメージをつけることで、さらに自信がついてきます。 成功した時のイメージをすることのメリットは「自分にはできるんだ」という確信を持てるようになることです。セルフハンディキャッピングは失敗するかしれない恐怖心から来ていますが、成功イメージをすることで恐怖心が消え、物事を楽しく取り組むことができます。

失敗しても気にしない気持ちを持つ

失敗した時は人の目が気になったり、つい失敗した言い訳をしたくなるものです。しかし、ここで言い訳をしても誰の得にもなりません。言い訳ばかりしていては、周囲からの信用にも欠けてしまうことがあります。 失敗したことを受け止めていく努力が必要です。もし失敗して怒られたり、否定されることを恐れていては前に進めません。失敗の原因を指摘されたら、素直に受け止めていきましょう。 そして、褒められたいという承認欲求を捨てましょう。そうすることで失敗を教訓とし、次の挑戦で生かせることができるでしょう。

セルフハンディキャッピングに関連する心理学用語

それでは、セルフハンディキャッピングの原因と克服方法を分かったところで、最後にセルフハンディキャッピングに関する心理学用語を解説していきます。

セルフサービングバイアス

セルフサービングバイアス(自己奉仕バイアス)とは、自分の有利になるように、物事の出来事を帰属させることを言います。 例えば、仕事でのプロジェクトが成功した際「自分の力で成功した」と帰属させ、失敗した際は「この環境が悪い」と、自分にとって都合の良いように帰属させることです。 セルフハンディキャッピング同様、この心理が働く要因は、自分に非があったと認めるとプライドが傷つくことを拒否している状態からきています。成功すれば自分の手柄となり、失敗すれば環境や他の人のが原因だと考えるこで、良く言えばポジティブな思考が働きます。 しかし、この心理作用には大きなデメリットがあります。人には感謝をせずに自分に対して過大評価をし、他人からの評価は下がっていく一方です。客観的に物事を把握するために、セルフサービングバイアスだということを自覚するだけで、改善されていくでしょう。

自己呈示

自己呈示とは、自分ににとって望ましい印象を与えるためにアピールすることです。周囲の人たちに好印象を与えるために、自分が望むイメージを伝えていきます。 自己呈示には「防衛的自己呈示」と「主張的自己呈示」の2種類が存在します。セルフハンディキャッピングの原因である、否定的な印象を周囲から持たれる可能性がある場合に、自分の印象を守るという戦術的行動から「防衛的自己呈示」に該当します。

不安を払拭してみることから始めよう

いかがでしたか? セルフハンディキャッピングという言葉を初めて聞いた方でも、身に覚えのある現象ではないでしょうか。なんてことない日常の中にも潜んでいる心理行動です。また、日本では謙虚な振舞いを重視される傾向があるため、謙遜として自分の評価を下げることが多いです。 生活している上で、セルフハンディキャッピングを使うシーンも出てくるでしょう。しかし、習慣してしまうと意欲の低下になる場合があります。 対策としては、不安や失敗への恐れに意識を向けるのではなく、成功する方へ意識を向けることができれば、今やるべきことに集中することができます。そうすると、セルフハンディキャッピング心理が働くことなく、言い訳をせずに、本来の自分自身と向き合えるようになるでしょう。

SHARE
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次