生存バイアスとはどのようなものなのでしょうか。似たような言葉である認知バイアスとの違いや、具体的な例などをいくつかご紹介します。また、生存バイアスの罠にかかりやすい人の特徴や、生存バイアスの罠にかからないための対策についても徹底的に追求しました。
生存バイアスとは
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「生存バイアス」とは一体どのような意味を持つ言葉なのでしょうか。気になる「生存バイアス」という言葉の持つ意味や、どんなシチュエーションで使われるかなどいくつかまとめました。
「生存バイアス」の意味
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「生存バイアス」の意味とはどのようなものなのでしょうか。「生存バイアス」の「生存」とは生き抜いた人や生き残った人のことを表しています。また、「バイアス」という言葉の意味には「偏った」という意味があり、一つの見方や意見に考え方が偏ってしまっている偏見を持った状態などを意味しています。
つまり、「生存バイアス」というのは途中で脱落してしまった人々を視野に入れず、生き残った成功者だけを見て偏った思考に陥ることを言います。
様々なシーンで罠が張られている
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「生存バイアス」は様々なシーンで罠が張られています。例えば、ダイエットサプリや健康を意識したサプリの宣伝など、成功者のみが取り上げられ「○○キロ痩せた」「○○を飲んでから調子が良い」などとプラスのことのみ書かれていることがほとんどです。
「個人差があります」と小さく書かれているだけで、不特定多数の効果が少なかった人について触れられていることはほとんどありません。「生存バイアス」にかかりやすい人はそこに罠があることに気づきません。そのため、「こんなにいいサプリメントなんだ」と感じ、絶対に効果があると思い込んでしまう傾向があります。
この生存バイアスの罠はFXや株などの投資など、「絶対に稼げる○○」などにも潜んでいます。
生存バイアスと認知バイアスの違い
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「生存バイアス」とよく勘違いされやすい言葉に「認知バイアス」という言葉があります。認知バイアスのもつ意味とは一体なんでしょうか。生存バイアスとの意味の違いや、認知バイアスの具体的な例についていくつかご紹介します。
「認知バイアス」の意味
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「認知バイアス」とは、自分のその時の気分や感情、立場などによって物の見方が偏ってしまうことを意味しています。
「生存バイアス」も「認知バイアス」も物の見方が偏ってしまう点では同じですが、「生存バイアス」は成功者の例、「認知バイアス」は自分の感情によって、考えが偏ってしまうという違いがあります。似たような言葉で混同されやすいですが、この点が生存バイアスと認知バイアスの大きな違いなのです。
認知バイアスの具体例
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認知バイアスの具体例としては「自分は大丈夫だろう」というものがあります。健康診断の結果が悪くても、自分は病気にならないだろうと根拠もなく思いこんでしまうことなどが例として挙げられます。
また、地震や台風などの自然災害の際、避難勧告が出ているにも関わらず「自分は大丈夫」「一度も災害にあったことがないから平気」など、自分の過去の認識で避難をしないといった行動なども、認知バイアスにかかっていると言えます。
生存バイアスの具体例
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生存バイアスの意味や認知バイアスとの意味の違いをご紹介しましたが、生存バイアスにかかっているというのは一体どういうことなのでしょうか。生存バイアスにかかっている具体的な例を分かりやすく、いくつかご紹介します。
例①ユーチューバーは楽な仕事である
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最近ユーチューバーという職が注目され、世間一般な職業として定着し始めました。ユーチューバーは好きなことをしてお金を稼げるという楽なイメージを持つ人が多くいます。今では子供たちがなりたい職業ランキングに必ずランクインするユーチューバーですが、ユーチューバーとしてお金を稼ぐことが出来ているのはほんのごく一部です。
そのことに気付かず、ユーチューバーは遊んでるだけでお金が貰える楽な仕事だと思ってしるのであれば、生存バイアスにかかっていると言えるかもしれません。
例②起業すれば儲かる
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起業すれば儲かるというのも生存バイアスにかかった状態です。当たり前のことですが、起業したとしても仕事がうまくいかなければお金を稼ぐことができません。しかし、世の中には起業して成功した人のインタビューなど成功体験ばかりが取り上げられ、失敗談よりも多く耳にすることでしょう。
そのため、自分でも儲けることはできるのではないのかと思い込んでしまう人が少なからずいます。そういう人は全く儲からない可能性や、借金を抱えてしまう可能性が全く見えていないため生存バイアスにかかってしまっている状態です。起業すれば儲かるという話には飛びつかず、成功すればということを頭に入れておく必要があります。
例③体罰は悪いことじゃない
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体罰による事故や自殺など社会問題として取り上げられている今日ですが、体罰は悪いことではないと思っている人がまだまだ世の中には存在します。教育するにあたって体罰はある程度必要だと考えていたり、厳しい練習によって良い成果を出すことができると思っている傾向があります。
体罰は悪いことではないと考える人は、生存バイアスにかかっている可能性が非常に高いと言われています。現代で問題になってるように体罰を受けて怪我をしたり、亡くなった人は少なからずいます。そういった人たちの事を無視し、体罰に耐えた人だけを見て体罰を肯定するのであれば、生存バイアスにかかっていると言えるでしょう。
例④今の若者は軟弱である
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今の若者は軟弱であると考えるのも生存バイアスにかかっている証拠です。昔も身体の弱い人や心の弱い人は必ずいたはずです。また、今でも元気な若者はいますし、病気を一度もしたことないという若者もいます。「今の若者は○○」だと過去と比較する人は昔の記憶が薄れてしまっている傾向があります。
その結果、過去と比較出来ているようで出来ていないという状況になっているのです。また、昔よりはるかに医療が進歩しているため、昔は病気だと言われていなかった症状も実は病気であったと判明することも多いです。そういったことを視野に入れず、自分の周りだけで判断してしまうのは生存バイアスにかかっていると言えるでしょう。
例⑤社員のボーナス平均〇〇万円
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平均という言葉を意識せず、社員のボーナス平均○○万円という求人情報などに飛びついてしまう人も、生存バイアスにかかっていると言えます。平均○○万円と言うことは、多くもらえている人と少額しかもらえていない人など様々と言うことになります。
また、入社して短期間で辞めた人はそもそもボーナスを受け取っておらず、その人たちが含まれているのかも大切なポイントです。その他にも、契約社員と正社員とで差があるなど、細かな部分まで視野に入れなければ生存バイアスから脱することはできません。
生存バイアスの罠に引っかかる人の特徴
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生存バイアスについての具体的な例をいくつか紹介してきましたが、生存バイアスの罠に引っかかってしまう人にはどんな特徴があるのでしょうか。生存バイアスの罠に引っかかりやすい人の特徴を知って自分自身はどうなのか考えてみるといいでしょう。
特徴①安易な希望を持っている
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生存バイアスにかかりやすい人の特徴として安易な希望を持っていることが挙げられます。ポジティブなのはとてもいいことですが、この先の人生うまくいくはずであるという根拠もない希望を持っているため、失敗するはずがないと強く思い込んでしまうようです。また、多数派など成功者についていけば成功すると考える人が多いと言われています。
安易な希望を持っている人は、成功者の言葉が正しいものなのかどうかを考えることはなく、成功者の意見を鵜呑みにしたり、多くの人が絶賛しているものに飛びつきがちになります。
特徴②鵜呑みにすることが多い
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生存バイアスにかかりやすい人は、その物事の正しさよりも発言した人の実績を気にしたり、周りがどういう反応をしているかを気にしたりする傾向があります。
「有名なあの人が言っていたから」と、成功者の発言や多くの人が実践している物事は自分で正しいかどうかの判断をせず、「成功者が言っているから」「みんながやっているから正しい」と、鵜呑みにしてしまうのです。その結果、広告やメディアなどの情報操作に惑わされやすく、生存バイアスの罠に引っかかってしまいます。
特徴③多数派についてると安心する
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多数派についていると安心すると感じる人も、生存バイアスにかかりやすい人と言われています。5人の中で4人が間違った判断をしており、1人が正しい判断をしていることが分かっていても間違った側にいた方がいいと思ってしまうようです。
そのため、生存バイアスにかかりやすい人は、間違っているのか正しいのかではなく、人が多い側についていくという心理を持っています。また、みんなが言っているのだから正しいのだろうという心理も働いているようです。
特徴④他人の意見や成り行きに任せたい
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生存バイアスにかかりやすい人は、他人の意見や成り行きに任せたいと考える人が多いと言われています。また、根拠もなく楽観的に考えてしまうため、他人の意見や成り行きで失敗したとしても「そういうこともある」と大して落ち込むことはありません。そのため、何度も生存バイアスにかかってしまいます。
また、生存バイアスにかかりやすい人は、自分で何かを判断するより他人の意見や成り行きに任せた方が気が楽だと考えているようです。
特徴⑤自分より立派な人を信じる
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自分より立場が上である職業の人物や、実績のある人物を無意識に信じてしまう人は、生存バイアスにかかりやすいと言われています。事実が正しいのかどうかより、その人が偉い人物なのかを気にするため、成功者の言葉ばかりに気が取られてしまいます。そのため、生き残った人の声しか聞こえず、生存バイアスにかかりやすい状態になってしまうのです。
生存バイアスの罠に引っかからないための対策
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生存バイアスの罠にかかりやすい人の特徴についていくつかご紹介しましたが、生存バイアスの罠に引っかからないためにはどうしたらいいのでしょうか。生存バイアスの罠に引っかからないための対策についてご紹介します。対策をしっかりとり、罠に引っかからないようにしましょう。
対策①思い込みを捨てる
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生存バイアスの罠にかからないためには、思い込みを捨てることが最も大切です。「あの有名大学教授が言っている」、「あの大企業の社長が言ってる」「テレビで言っているから間違いない」など、思い込みは禁物です。テレビやラジオだけではなく、SNSが浸透してきた現代では様々な情報が出回っています。
そのため、きちんと自身で正しいのかどうなのか判断することが大切です。「偉い人が言ってるから絶対に正しいだろう」などという思い込みを捨てることで、生存バイアスの罠対策になります。
対策②敗者にも耳を傾ける
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成功者などの勝者の意見に惑わされがちな人は、敗者にも耳を傾けることで生存バイアスの罠対策になります。広告や雑誌などのメディアでは、勝者と言われる成功者の話ばかりが取り上げられるため、敗者と言われる脱落していった人の話を耳にすることは少ないことでしょう。
そのため、生存バイアスにかかりにくくなるには一部の偏った意見だけではなく、全体を把握してすべてに耳を傾けることが大切です。例えば、レビューを参考にする際は星5などの高評価のコメントを見るだけではなく、星1など低評価のコメントを見るなど、両方の面で物事を捉えることが大切です。
対策③確率や統計を学んで理解する
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成功者だけを見て漠然と思いを馳せる前に、確率や統計を学んで現実を見ることで生存バイアスの罠にかかるリスクは確実に下がります。例えば、ユーチューバーでお金を稼げている人は全体の何パーセントなのか、プロのサッカー選手になれるのは全体の何パーセントなのかなど、分かりやすい数字にしてみることが大切です。
安易な希望を抱き実行する前に分かりやすい数字にしてみることで、敗者の多さに気づき、生存バイアスの罠に引っかかる確率はとても低くなります。
対策④自分の考えに責任を持つ
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自分の考えに責任を持つのも生存バイアスの罠にかからないための大切な対策です。生存バイアスの罠にかかりやすい人の特徴として、周りの意見を鵜呑みにしてしまうという特徴があります。自分で考えることがないため、責任を持って判断したとは言い難いのです。
「有名人が良いと言っていたから」など、言い訳のように物事を判断しているのであれば、生存バイアスの罠はすぐそこまで迫っています。生存バイアスの罠から遠ざかるには、自分で考え、自分の考えに責任を持つことが大切です。
対策⑤自分のいる社会は世界の一部分だと認識する
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生存バイアスを意識する上で、自分のいる社会は世界の一部分だと言うことを頭に入れておくことが大切です。どんなに物知りな人であっても、世界中すべての物事を知っているわけではありません。見えている世界はごく一部の世界です。
そのため、生存バイアスの罠に引っかからないようにするには、今見えている世界がすべてだと思い込まず、様々な角度で物事を考えることが大切です。
生存バイアスを理解し自分の思考を見つめ直そう
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生存バイアスの罠は様々なシチュエーションに存在しています。生存バイアスの罠に引っかかってしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれたり、損失などでマイナスになったりと良いことはありません。自分が生存バイアスの罠に引っかからないよう、もう一度生存バイアスについて理解し、自分の思考を見つめ直しましょう。