「陰徳を積む」という言葉を聞いたことがありますか。読み方は「いんとく」と言います。成功を手に入れるためには、陰徳を積むことが重要だと言われています。陰徳の意味や陰徳を積む方法を紹介します。陰徳の真逆と言われる陽徳についても紹介します。
陰徳とは
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「陰徳」や「陽徳」という言葉を聞いたことがありますか。陰徳を強く勧める宗教があるため、宗教用語と思い込んでいる人もいるようです。「陰徳あれば陽報あり」ということわざがあるように、「陰徳」という言葉は特別なスピリチュアル用語ではありません。「陰徳」について詳しく知っていきましょう。
「陰徳」の読み方・意味
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「陰徳」は「いんとく」と読みます。人の知らないところで、陰ながら行う良い行動のことを指します。例えば、誰も歩いていない道でゴミを拾ったり、草むしりをしたりすることを意味します。誰かに頼まれたから行ったり、誰かが見ているから頑張るのではなく、誰が見ていなくても、他人からの評価に関係なく、行う良い行動を「陰徳を積む」と言うのです。
理にかなった考え方
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陰徳は特別なスピリチュアル的な効果を期待する行動ではなく、人の評価に関係なく、良い行動をしていれば良い結果ができるという理にかなった考え方とも言えます。簡単に言えば、誰が見ていなくても努力を続けていれば結果や成長につながるので、良いことが起こりやすいのは当然なのです。
陰徳を積むとどうなる?
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陰徳を積むとどうなるかは、スピリチュアル的なことから理にかなったことまでたくさんあります。陰徳を積むと起こりやすいと言われている代表的な内容を4つ紹介します。
徳が貯まる
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陰徳を積むと徳が貯まると言われています。徳とは良い行動のことを指すのですが、貯金のように良い行動を貯めておくことができると考えられています。陰徳を行うと徳が貯まり、いつかは自分や周りの人を幸せにするような結果がやってくると信じられているのです。
運が上昇する
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陰徳を積むと良い運気になるとも言われています。そのため、最近ツイていないことが多い、悲しいことがあった、腹が立つことがあったと感じている人ほど、状況を良い方向へと軌道修正させるために陰徳を積むべきだという考えもあります。
セルフイメージが上がる
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陰徳を積んでいるとき、頭の中は「このゴミを取ったら道がキレイになるな」「倒れている自転車を直しておくと持ち主が喜ぶな」など、プラスのイメージを持って行動しています。
直接自分に関係ないことだとしても、自分の頭の中でプラスのイメージを思い浮かべることは、脳にとても良い影響があります。自然とポジティブになって、いつの間にかセルフイメージも上がるようになります。
精神状態が穏やかになる
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自分の私利私欲ではなく、見返りを求めずに、誰かが喜ぶことを行うことは精神状態が穏やかでないとなかなかできません。腹が立って仕方ないときに、良い事をしようとしても「誰がこんなところにゴミを捨てたんだ!」「落書きなんてするヤツはろくでもない人間に決まっている!」など、怒りを行動の原動力にしてしまいます。
陰徳とは自分が通るのに不便だから物を片付けるような行動ではなく、自分が通らない道でも、誰かが通るときに楽なように片づけたりキレイにする行動を指します。「邪魔なゴミがあって自分が通れない」と腹を立てながらゴミを片付ける行為は陰徳とは言えません。
自分の利益にはないけれど、知らない誰かのために掃除をしようと思うとき、心は自然と穏やかになっているはずです。陰徳を積むようになると、どんどん自分の精神状態が穏やかになっていくことに気付けます。
陰徳を積む方法
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陰徳を積もうと思っても、今まで私利私欲のために行動してきた人は、何を行えば良いのか全く思い浮かばないことがあります。まずは、これから紹介する陰徳を積む方法を参考にして行動してみましょう。繰り返し陰徳を積むようになると、自然と何をすべきかが分かるようになります。
方法①人や物を大事にする
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陰徳を積みたいと思ったときは、まずは身の回り人や物を大事にすることから始めてみましょう。コートを脱いだままにせずにハンガーにかける、オフシーズンになったらクリーニングに持って行って、クロゼットにかけて置く、こんな当たり前のことでも陰徳を積むことはできます。
靴のかかとを踏まない、汚れた靴はすぐに捨てるのでなく、洗ったり磨いたりして大事に使う、親や兄弟、友達から連絡が来たら、放ったらかしにせずに早めに返事をするなど、簡単にできるけれどやってこなかったことが思いつくはずです。人や物を大事にして陰徳を積むことは特別なことではなく、できることだけど、やってこなかったことが実は多いのです。
方法②あらゆるものに感謝する
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何気なく食べている食事は、お金を払ったのだから食べられて当然だと思い込んでいませんか。コンビニやスーパーで売っている100円のおにぎりは、お米を育てる農家や、調理する人、運ぶ人、売る人など、たくさんの人がいないと自分の手に入らない物です。
100円を払ったのだから、食べられるのは当たり前と思っている多くの人は、お米を育てたり収穫する苦労を知りません。食品だけでなく、衣服や電気、スマートフォン、テレビ、化粧品など、ありとあらゆる物は誰かのおかげで自分の手元にやってきているのです。
当たり前と思っていることに感謝ができるようになると、自然と陰徳が積める人間に成長することができます。「ご飯が食べられるってありがたいんだな」「電気が使えるってありがたいな」と感じられる人間になりましょう。
方法③ポジティブな言葉を使う
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ポジティブな言葉を使っていると、自然と前向きな考えをするようになります。誰かが仕事で失敗しても「〇〇さんのせいで残業になりそう」「こんなミスをするとかバカなんじゃないの」と、ネガティブな言葉を使っていると、悪いことばかりが続いて起こりやすくなります。
陰徳を積みたいと考えているのなら、同じことが起こっても「みんなでフォローして〇時までに終わらせよう」「こういうことがあると一致団結する良いキッカケになるよね」とポジティブな言葉を使いましょう。
ポジティブな言葉は自分だけではなく周囲の人間も明るい気持ちにさせます。自分の言葉によって気付かないうちに周囲の人間の気持ちを明るくさせる行動こそが、陰徳につながっていると言えるのです。
方法④人のせいにせず許容する心を持つ
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何か自分の思い通りにならないことがおこると、すぐに誰かのせいにしてはいませんか。遅刻をしたのは、自分が早く起きなかったことや、余裕を持った行動をしなかったことが原因なのに「お母さんが起こしてくれなかった」「夜中に友達から電話が来たせいで起きられなかった」など、誰かのせいにしている人が多いのではないでしょうか。
陰徳を積みたいと考えているのなら、誰がどう考えても他人のせいだと思えるようなことでも、人のせいにするのは止めてみましょう。全ての行動は自分が原因で起こっていると考えてみるのです。
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道で人にぶつかったとき、相手がぶつかってきたと思うと腹が立ちます。自分の歩き方が悪かった、うまく避けられなかった自分が悪いと思うと、相手に対して怒りでなく反省が生まれます。怒っていたときにはまったく思い浮かべていなかった「相手がケガをしていないか」が気になるようになります。
こんなふうに考え方を少しずつ変えていくと、自然と陰徳が積めるように変化できるのです。
方法⑤困っている人を助ける
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陰徳を積めるようになりたいなら、周囲にいる困っている人に対して敏感になりましょう。「助けてください」と言ってくる人だけが困っているわけではありません。言葉にできないけれど、悩んでいたり困っていて誰かに助けてほしいと思っている人はたくさんいます。
例えば、電車内で気分が悪いけれど「座りたい」と言えない人や、電車の乗り換えがよく分からないけれど人に声をかけ辛くて困っている人、地図の前でどうすれば良いか分からなくて固まっている人など、いつもは何気なく通り過ぎている空間にも困っている人は必ず存在しています。
「助けて」って言わなかったからと、放っておくのではなく「もしかしたら困っていませんか?」「よかったら〇〇しましょうか?」と声をかけられるようになりましょう。
「陰徳」と「陽徳」の違いとは
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陰徳の対義語として「陽徳」という言葉があります。同じように良い行いをすることを意味するので、一見違いが分からないかもしれません。しかし、陰徳と陽徳には大きな違いがあり、その効果も違うと言われています。陰徳と陽徳の違いについて、詳しく紹介していきます。
そもそも「陽徳」の意味とは
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陽徳とは、陰徳とは違い、周囲の人の視線を集めた上で良い行いを堂々と行ったり、見返りを求めた上で行う良い行動を意味します。例えば、お母さんに褒められたいからゴミを拾うのは、陽徳です。誰も見ていない道のゴミを拾うのは陰徳です。同じ「ゴミを拾う」という良い行為ですが、見返りを求めるかどうかで意味が変わってくるのです。
「陰徳」は引き継がれていくもの
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陰徳を積むと、子々孫々まで繁栄すると言われています。一方で、陽徳にもプラスの効果がありますが、自分の代のみでその効果は終えるとされています。親がお金持ちだったのに没落してしまったり、親のように名を残せずに七光りとしか言われなかったり…。そういった出来事の原因には、もしかしたら陽徳と陰徳が影響しているのかもしれません。
「陰徳」が「陽徳」に変わってしまうことも…
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陰徳のつもりで行っていることでも、誰かに見られていて見返りを与えられてしまうと陽徳に変わってしまうこともあります。悲しいことですが、そんなつもりではないのに「恩着せがましい人」と批判されることもあるかもしれません。
見返りを求めないことが陰徳と言いますが、お年寄りの荷物を持ったらお礼にお金を渡されてしまったり、お菓子をもらったりしてしまうこともあります。お金持ちそうな人だから親切にして、見返りをもらおうとしてしていると誤解されてしまう場合もあります。陰徳のつもりで行ったことでも、結果的に陽徳に変わってしまうこともゼロではないのです。
陰徳を積んで成功を収めた偉人とは
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世の中には陰徳を積んで成功を収めたと言われている偉人がいます。そんな偉人を3人紹介します。偉人が行った陰徳を参考にして、自分ができることは何かをよく考えてみましょう。
松下幸之助
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松下幸之助は、パナソニックを一代で大きくした創業者としてだけでなく、有名な政治家を何人も排出した松下政経塾を立ち上げた人としても有名です。松下幸之助に対するエピソードは多くありますが、自分の利益にならないことでも、多くの商売や人生に行き詰まった人の悩みを聞きアドバイスを伝えてきました。
ある時は借金返済に困った経営者に新たな借金をするのではなく、過去の会社の実績を取引先に伝えた上で売掛金をきちんと回収する方に力を注ぎなさいとアドバイスを行いました。
売掛金の回収を熱心に行うと、会社の経営が傾いていると周囲の人に思われると考えていた経営者は反対します。そこで松下幸之助は売掛金を回収せずに新たな借金を作ることこそ、信用を失う行為だと諭したそうです。それによって、経営者は売掛金の回収に力を注ぎ、目標だった5,000万円を超える、7,000万円を手にすることができたそうです。
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この経営者は松下幸之助に大変感謝をしたそうですが、松下幸之助は自分の利益を考えてアドバイスを送ったわけではありません。お金に困っているならと、お金を貸した方が相手に喜んでもらえたでしょう。しかし、お金を貸さないことで相手に嫌われてても良いから、売掛金を回収することが本当に相手のためになると考えてアドバイスを行ったのです。
このように自分の利益や見返りに関係なく、自分が良いと思えることを行うことこそが「陰徳を積む」ことにつながったと言えるのではないでしょうか。
徳川家康
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徳川家康は諸大名を含めて、1人も裏切者を出さなかった将軍だと言われています。「温和だが臆病」と言われることもあった徳川家康がなぜ、そのような偉業を成し遂げたのでしょうか。
徳川家康と豊臣秀吉が自分たちが持っている財宝などについて話したときに、豊臣秀吉や他の大名が珍しい茶器や刀を自慢げに話しました。しかし、徳川家康は「私の財産は家臣です」と答えたそうです。実際、何百といる家臣1人1人の名前だけでなく、功績や出自まで覚えていたそうです。また、どんな下級武士の話もよく聞いたとも言われています。
将軍という地位にいれば、部下の名前を知らなくても問題はないはずです。しかし、身分などに関係なく部下を大切に扱ったのは、陰徳を積む行為に繋がったと言えるのではないでしょうか。
本田圭佑
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ビッグマウスと言われている本田圭佑ですが、人望が厚くスポーツだけでなく経営者としても成功を収めています。2019年にはTwitter上で「僕が1万円を払うので、僕にサッカーを教わりたい人っていますか?」と募集をかけて、実際に本田圭佑が1万円を払って少年にサッカーを教えています。
世界には何十万円を払ってでも、本田圭佑にサッカーを教えてもらいたい、会いたいと思う人もいるはずです。それなのに、1万円を自分が払った上でサッカーを教えるという、一見何の得にもならないことをサラッと行えるのが、陰徳を積むことに繋がっているのではないでしょうか。
今できることから陰徳を積んでいこう
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陰徳を積むことは、特別なことではありません。今すぐにでもできます。自分がツイてない、変わりたいと感じているのなら、陰徳を積むことによって自分を変えていきましょう。他人の目や評価を気にすることなく、自分がやりたいと思える善行を積み重ねていけば、きっと明るい未来が待っているはずです。