駄サイクルとは自分が「駄目」な「サイクル」の輪に入ることをいいます。駄サイクルは造語で石黒正数の漫画「ネムルバカ」で登場し、自己満足の世界に浸ってしまうことを例えた言葉としてネットで話題になりました。駄サイクルについて、心理学の視点で原因や対策法を紹介します。
駄サイクルにはまっていませんか?
あなたは「駄サイクル」という言葉を聞いたことはありますか?駄サイクルは自分が「駄目」な「サイクル」の輪に入ってしまい、自分の活動が自己満足に終わり、成長することが出来ないことの造語です。 今回は「駄サイクル」の正体や駄サイクルの輪を抜けだす方法を紹介します。
駄サイクルの意味・出典は?
駄サイクルとは「駄目」な「サイクル」を合わせた造語です。「駄サイクル」は、石黒正数が書いた漫画「ネムルバカ」の中で登場する造語です。ネムルバカは2006年~2008年にかけて月刊COMICリュウに連載されていました。 ネムルバカの作中でミュージシャンを目指す女子大生、鯨井ルカが「自己顕示欲を満たすための空間」のことを「駄サイクル」と表現していました。そのことが当時、ネットでも拡散し「駄サイクル」という言葉は有名になりました。
駄サイクルに陥る構造とは?
「駄サイクル」に陥る構造を作中のなかで鯨井ルカがこのように言っています。「自称ア~チストが何人か集まってそいつら同士で」「見る→ホメる→作る→ホメられる→を繰り返しているんだ」と鯨井ルカが作中で話しています。 鯨井ルカは駄サイクルができる理由について「輪の中で需要と供給が成立しちゃってるんだよ」といっています。 例えば、仲のいいバンド仲間同士で相手の伴奏を見て、それをホメて、自分も似たような作品を作り、伴奏し、それがバンド仲間からホメられるというバンド仲間同士のなれ合いの中で自分は才能があると思い込んでしまうことを的確に「駄サイクル」は表しています。
鯨井ルカは作中で、駄サイクルのことを「自己顕示欲を満たすための空間なんだよ」とバッサリ批評しています。 人は「駄サイクル」の中に入ると、自称アーチストたちは「やってて楽しいと思える程の練習はするが苦しい修行はツライからせず、正式に(実力の)裁きを受けるコンペやコンクールは身の程を知るのが怖いから出ず」なれ合いの中では自分には才能があると錯覚します。 最後に鯨井ルカは「駄サイクル」について「駄サイクルの輪は自称ア~チストに限らず色んな形でどこにでもある…。たぶんここにも」と「駄サイクル」はいろんな場面であることを示唆しています。
駄サイクルになる原因4個
漫画での造語で「駄サイクル」ですが、その構造について妙に信ぴょう性があり、あなたも「あるある」と思わず、うなづいてしまいますよね? 実は「駄サイクル」になる原因を心理学的に原因を説明することができます。「駄サイクル」を回しているとき、もしかすると、認知バイアス(思い込み)にかかっている可能性があります。 心理学的にみて、どのようなときに「駄サイクル」に陥るのかを考えてみましょう。
原因1:自分はすごい能力を持っていると思い込んでいる
駄サイクルに陥る人は自分はすごい能力があると思い込んでいます。このことを「ダニング=クルーガー効果」と呼びます。ダニング=クルーガー効果は自分の価値観や生活習慣などから「自分は能力が高い」と思い込み、主観的に自分の能力を誤った判断をすることをいいます。 自分の能力が低い人でも「自分は平均よりは上」の能力を持っていると勘違いしてしまうのです。これは自分以外の外の世界を勉強していないから、誤った判断が生まれてくるといわれています。 このことを駄サイクルに当てはめると、自分が所属している駄サイクルの集団以外の世界を知らないため「自分たちはすごい」と思い込みます。しかし、自分たちの能力は駄サイクルの集団の外に出ると、大したことがないという事実が待っています。
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原因2:自分たちの本当の実力や現実を見たくないから、意思決定を無意識で怠る
自分たちの本当の実力を見たくないとき、人は意思決定を無意識で怠ります。鯨井ルカは駄サイクルの人は「自分たちの実力を知りたくないから、正式なコンペやコンクールにでない」と指摘している心理的動きのことを心理学では「可用性ヒューリスティック」と呼びます。 可用性ヒューリスティックになる原因は、人は問題解決のために意思決定を行うときに無意識のうちに簡単な方を選ぶからです。簡単な方法とは自分が経験したことあるものだけを選びます。 つまり、駄サイクルの場合、コンペやコンクールで現実を見るのは経験が少なく、大変なことだと思っているために仲間内でなれ合いでの発表の方を優先してしまいます。
原因3:新たなことに挑戦したくなく、現状維持を選んでいる
駄サイクルに入っている人のほとんどが新たなことに挑戦したくなく、現状維持を選んでいる可能性があります。人は大きな環境の変化や自分が知らないことやものを避けて、現状を環境を維持したくなります。このことを心理学では「現状維持バイアス」と呼ばれています。 人が現状維持バイアスに陥る原因として、現状を変化させると「何かを失うかもしれないし、何も得られない」とマイナス面ばかりを考えてしまうからだといわれています。 駄サイクルの場合、なれ合いをしている現状を壊したくなく、コンペやコンクールに出ると、なれ合いをしている仲間から後ろ指を指されるかもと思い、挑戦をためらってしまうのかもしれません。
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原因4:駄サイクルのなれ合い集団をひいきしている
駄サイクルのなれ合いの集団にいると、駄サイクルの集団が「すごい集団で、家族のように大切な集団だ」と考えている可能性があります。このことを心理学では内集団(ないしゅうだん)バイアスと呼ばれています。 内集団バイアスとは自分が所属している集団に対して、特別な思いを抱き、自分が所属する集団の能力などを高く評価する傾向にあるといわれています。 内集団バイアスを駄サイクルに当てはめると、自分が所属する駄サイクルの集団に特別な思いを抱き、駄サイクルの集団の人たちはホメたたえて、他の集団の能力のことを「自分たちより能力が低い」と考え、自分たちの集団は「すごい!」と思い込んでしまうでしょう。
原因5:バイアスの死角にハマっている
人は自分のことを顧みず、他人をみてバイアスにかかっていると感じます。 たとえ自分が駄サイクルの輪にハマっていることに気が付き、駄サイクルが悪いものだと気づいているから自分は駄サイクルにはなっていないと認知してしまいます。このことを「バイアスの死角」と呼ばれています。 「死角のバイアス」により、他人が駄サイクルの輪に入っていることに気が付いて、それを指摘できるものの、自分の行動に駄サイクルになっていることや、自分が所属している集団は駄サイクルになっているかどうかを冷静にみることができません。
駄サイクルを抜け出す方法とは?
それでは、駄サイクルの輪を抜ける方法はあるのでしょうか。心理学的に駄サイクルを抜け出す方法を考えてみましょう。
方法1:新しいことを恐れない
駄サイクルを抜けるには新しいことを恐れないのが大切です。駄サイクルの輪にハマる人は新しいことをすることに恐れています。自分の能力を肯定し、認めてくれる居心地が良い集団の中にいたいという現状維持を選びたいと思うからです。 しかし、本当に目指したい自分の将来の姿を考えたとき、このまま駄サイクルのぬるま湯につかっていていいのかをよく考えてみましょう。駄サイクルが居心地がいいのは新しいことに挑戦していないからかもしれません。 駄サイクルに入り続けていると、自分の成長は見込めません。人が成長するには新しいことに挑戦しつづける力が必要だといわれています。
方法2:周りに対して、駄サイクルを抜けたいことを伝えてみる
自分が所属している駄サイクルの集団に自分が「駄サイクルを抜けたい」ことを伝えてみましょう。駄サイクルの集団に所属するメンバーに対して、真剣に自分の気持ちを伝えることでメンバーと自分が持つ活動についての認識のズレを確認してみましょう。 自分が駄サイクルの輪から抜けて、一皮むけた成長をしたいと思っていることを相手に熱意を持って伝えたら、もしかすると、相手があなたの熱意を理解し、あなたと一緒に相手も駄サイクルの輪を抜けることを決意するかもしれません。
方法3:自分が本気ならその駄サイクルの集団から抜けてみる
自分が所属している駄サイクルの集団のメンバーに自分が駄サイクルから抜けたいと伝えても理解されなかった場合、駄サイクルの集団から抜けてみましょう。 自分が置かれている環境に向上心がある人が少ない場合、残念ながら、駄サイクルを抜けたいということについて理解はされないでしょう。もし、自分の活動が集団に所属しなければできないことなら、自分が成長できそうな環境に身を置き直すというのも大切です。 もし、自分の活動が個人でも活動ができるなら、ストイックに孤独な状態をつくることにより、物理的に駄サイクルの輪を抜けることもできます。
方法4:自分は将来どのようになりたいのかを明確にする
駄サイクルの輪を抜けるには「自分は将来どのようになりたいのかを明確にする」必要があります。自分の活動の目標がどこにあるのかを明確にすることで、自分がどのように成長すればいいのか方法を真剣に考えます。 自分がどのように成長すればいいのか方法がわかったら、まずその方法を挑戦してみましょう。自分が挑戦する行動に出るだけでも駄サイクルの輪から抜けるきっかけになります。
駄サイクルの集団は最強のバイアス集団だ
自分が駄サイクルの輪に入ってしまうのは、向上心が低く、バイアスにかかっている集団に影響されてしまうことがわかりました。自分が駄サイクルの集団に所属していると感じたとき、大切なことは自分は「本当はどのような姿になりたいのか」ということを意識するのが大切です。 自分が、なれ合いの環境の中に入り、自分の能力を認められ続けたいのであれば、そのまま駄サイクルの集団に所属していた方が幸せかもしれません。しかし、自分がもっと成長したいと思うなら、駄サイクルを打ち破る必要があります。 自分が駄サイクルの輪に入っていることを楽しいと感じるのか、このまま駄サイクルの輪を回ったままではいけないと思うのかは自分が目指したい目標があるかどうかによるということになります。