マシュマロ実験とは?過去の実験は失敗?最近行われた再実験とともに解説

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マシュマロ実験というものをご存知ですか?マシュマロを使って子供たちの自制心と、成長してからの成功を見るもので、心理学では有名な実験です。しかし最近行われた再実験ではまた別な結果が出たと話題になっています。今回はそんなマシュマロ実験についてご紹介していきます。

目次

マシュマロ実験とは?

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マシュマロ実験とは、1960年代後半から1970年代前半にアメリカの心理学者ウォルター・ミシェルによって行われた実験です。このマシュマロ実験は当初、「目の前の欲求を抑えて大きな成果を得る」という自制心の幼児期における発達を調査するために行われていました。

マシュマロ実験の内容

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4歳の子供を何もない教室に1人ずつ通し、椅子に座らせます。さらにマシュマロを1つ与え、「15分間マシュマロを食べずに我慢したら、もう1つあげる。いない間にマシュマロを食べてしまったら2つ目はあげないよ。」と言って実験者たちは教室を出て、子供たちを1人残しました。 残された子供たちを観察した結果、すぐにマシュマロを食べた子は少ししかいませんでした。しかし、集められた3分の2の子供たちは、結局我慢できずにマシュマロを食べてしまいました。15分間我慢し、2つ目のマシュマロをもらえた子供は3分の1ほどでした。

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自分の娘を実験に参加させていたウォルター・ミシェルは、娘の成長を目にしていくにつれ、自制心と子供たちの人生の成功に強い関係性があると感じ、自制心と社会的な成功に関係性があるのではと考えました。 実験から18年後の1988年、マシュマロ実験を受けた子供たちの追跡調査と大学進学適性試験(SAT)が行われました。

子供の将来を左右するのは「自制心」という結果に

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追跡調査の結果、マシュマロを我慢できた3分の1の子供たちは大きくなってからも自制心があり、周りからも優秀だと評価されていることがわかりました。また、SATの試験の点数においても、マシュマロを我慢できた子供たちの方が平均点がいいという結果になりました。 さらに23年後の2011年にも追跡調査が行われ、自制心はずっと継続されていることもわかりました。マシュマロ実験被験者の大脳を撮影した結果、マシュマロを我慢できたグループは集中力に関係する脳の部位が活発であることもわかりました。

自制心が強い人は成績がいい?

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マシュマロ実験を受けていた子供たちは、スタンフォード大学付属の幼稚園の生徒です。この子供たちは優秀で、IQに大きな差はありませんでした。IQと言えば、言わずと知れた知能指数です。これが高いと勉強ができる、賢い…というイメージですよね。 しかし、このマシュマロ実験の追跡調査により、幼児期のIQの高さよりも、マシュマロを我慢できた自制心の強さや弱さが試験の点数に影響すると結論付けられたのです。成長して学力が高くなるのは、IQの高い子よりも自制心の強い子だということです。 この心理学界で有名な実験結果は育児本や育児サイトなどで取り上げられ、子供の将来の成功を願って自制心を育てようとする傾向が強くなりました。

マシュマロ実験は失敗?最近行われた再実験とは

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しかし、最近になりマシュマロ実験は大学関係者のみで行われた限定的なもののため、結果に疑問がある…と考えたニューヨーク大学のテイラー・ワッツとカリフォルニア大学のグレッグ・ダンカン、ホアナン・カーンの3人は、被験者の数を増やした再実験を行いました。

マシュマロ実験の再実験の内容

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再実験は、マシュマロ実験での被験者186人に対し900人以上を対象にするという大規模な形で2018年5月に行われました。マシュマロ実験は「大学の付属幼稚園の子供たち」が対象でしたが、人種や民族、親の学歴や経済的な背景などにおいてさまざまな被験者を対象とされました。

子供の将来を本当に左右するのは経済環境

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マシュマロ再実験の結果として導き出されたのは、「マシュマロを我慢できた子供たちは裕福な家庭環境にあった」「自制心の程度は、3歳までの家庭の年収と環境に依存して決まる」という結果でした。 簡単に説明すると、裕福な家庭の子供たちは、大人との約束を守ることで利益を得た経験があります。そのため、待っていれば必ずもらえるという約束への信頼を学んでいます。 また、マシュマロに限らず食べたいものをいつでも食べることが可能な環境にあります。これらのことから裕福ではない家庭の子供に比べ、「2つ目のマシュマロをもらう」ために我慢することはさほど難しくないということができます。

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裕福ではない家庭の子供は、「これを我慢すれば〇〇をあげるね」という約束を親に守られた経験がない子供が多いため、その言葉を信じられません。我慢して2つ目のマシュマロをもらいたいという気持ちより、目の前のマシュマロを食べること優先してしまうのです。 さらに貧困層の場合、15分間待っている間にマシュマロが誰かに奪われてしまうという危機感も持ってしまいます。誰かに食べられる可能性があるのなら、2個目に期待せず食べてしまうでしょう。これにより、子供の自制心は家庭の経済環境が大きく影響しているという結果が導き出されました。

貧困層の人が目の前の報酬を求める理由

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2013年にハーバード大学の経済学者センディール・ムライナサン氏をはじめとする研究チームは、貧困であることが自制心にどのような影響を与えるかについてマシュマロ実験の結果をふまえて示しました。 貧困であるという環境は、短期的報酬を求める傾向があります。すなわち、マシュマロ実験においては、裕福ではない家庭の子供たちが15分間待たずにマシュマロ1つを得ようとする…ということを示します。 その理由は、貧困の人ほど目の前にある報酬がなくなってしまったり、誰かに奪われてしまうことへの恐怖心を強く持っているからです。 この研究は、経済学・脳科学・心理学を合わせた「神経経済学」の観点においても詳しく研究されています。

マシュマロ実験に関連した実験と結果

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マシュマロ実験は心理学界においてとても有名な実験です。4歳の子供が大人になるまでのこれらの結果を分析し、再実験の結果も踏まえて様々な分析が出されています。また、マシュマロ実験に関連した実験なども積極的に行われてきています。それらの結果も見てみましょう。

母親の学歴における分析

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再実験を行ったテイラー・ワッツは、マシュマロ実験の被験者である子供の母親の学歴にも注目していました。母親の学歴は子供の学力に影響を及ぼすと言われています。母親が家庭で「勉強の大切さ」について子供に伝えてることなどの影響です。 しかしマシュマロ実験の再実験では、母親が大学の学位を持つ子供の場合と、母親が学位を持たない場合において、実験後の試験の点数などに差は出ませんでした。これらのことにより、子供の自制心と知能に親の学力は影響しないということも示されました。

年代ごとの自制心の変化について

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ミネソタ大学のステファニー・カールソンを中心とした博士達は、マシュマロ実験の結果を集めてマシュマロを我慢できた子供たちを年代別に分け、比較しました。 1960年代、1980年代、2000年代の3つの年代において、最も長くマシュマロを我慢できたのは2000年代の子供たちでした。「今の子は我慢できない」と言われやすい現代っ子ですが、意外にもマシュマロ実験の結果では現代っ子の方が自制心があるという結論です。 その理由として、早期教育により子供たちが賢くなり、自制心が早くからついていると考えられます。またもう1つの理由としては、デジタル機器などの進化により、子供たちが我慢するための想像力が豊かになっている可能性があるとも言われています。

自制心の訓練と老化現象の関り

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マシュマロ実験を行ったウォルター・ミシェルは、自制心は鍛えることができると言っています。自制心が学力を高めるという結論が長期にわたって信じられていたため、自制心を鍛えることは子育てにおいてとても重要とされていました。 また、自制心は「セルフコントロール」とも呼ばれています。セルフコントロールは夢や目標達成などのために重要とされており、ビジネス書などにも取り上げられています。

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しかし、ジョージア大学のジーン・ブロディが、2014年アフリカ系アメリカ人300人の学生に行った自制心の実験では面白い結果が出ています。この実験はボランティア活動への参加、感情、攻撃性などの項目で、自制心を17歳から22歳までの5年間かけて測定しました。 学生たちの血液を採取し、細胞を調べたところ裕福な家庭の学生は自制心が強いほど細胞が若いが、裕福ではない家庭の学生は自制心が強いほど細胞が老化しているという結果が出ました。 そのため、訓練で自制心を高められるが、その訓練は細胞の老化を早める危険性があると結論づけられました。簡単に言うと、自制心を鍛えることで健康を害してしまう可能性があるという結論です。

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将来を変えるのは自分次第

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マシュマロ実験と再実験、またマシュマロ実験に関連した実験や検証結果をご紹介しました。自制心が学力に影響があると聞くと、子育てや自分自身の成長のために自制心を鍛えたいと思うことでしょう。 しかし、再実験では家庭の経済環境が自制心に影響を及ぼすとの結果が出ています。結局裕福なら勉強ができるようになるのか…と諦めることはありません。自制心は育った年代によっても異なっているのです。 どれが正しいのか、まだまだわかりきっていないこともたくさんあります。諦めず自分の望む道に進んで切り開いていきましょう。たとえ自制心を鍛えなくても、直感のまま行動することで何かが生まれるかもしれません。

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