明らかに自分のミスなのに、口をついて出てくるのは謝罪ではなく自己弁護の言葉ばかり…そんな自己正当化をする人に、日々イライラを募らせていませんか?人が自己正当化を図る背景には、どんな心理が潜んでいるのか?自己正当化のメリット・デメリットを踏まえて解説します。
自己正当化する人には腹が立つ!
明らかにミスをしたのは自分なのに、口をついて出てくるのは謝罪ではなく、他人に罪をなすりつけるような自己弁護の言葉ばかり…そんな自己正当化をする人に、日々イライラを募らせていませんか? 人が自己正当化を図る背景には、どんな心理が隠れているのか?自己正当化するメリット・デメリットを踏まえて解説します。もしかしたら、他でもないあなたが周りから「自己正当化する人」だとレッテルを貼られているかもしれませんよ。
自己正当化の意味とは?
自己正当化とは、明らかに自分に落ち度があるにもかかわらず、身勝手な理由を並べて自身の立場を弁護することです。こう説明すると集団の中でしか起こり得ないようなイメージを受けますが、実際は単独でも起こり得ます。 たとえば、テストの点数が悪かったとき、「まあ、昨日は部屋の片付けしてたし当然か」と自分に言い聞かせたことはありませんか?これも「自己正当化」です。テストが迫ると無性に部屋を片付けたくなるのは、要するに自己正当化の“準備”をしたいわけです。 このように自己正当化をする人は、失敗の原因を他者や状況に押しつけることで、精神的な苦痛から逃れようとします。
自己正当化の類義語
自己正当化の類義語としては、「言い訳」「自己弁護」「口実」「託ける」などが挙げられます。「託ける」は簡単に言えば「関連性のない事柄同士を無理矢理くっつけて、自分にとって都合の良い口実を作り上げること」を指します。
自己正当化の英語表現
自己正当化の英語表現は「justify oneself」です。一方で自己正当化を間接的に他者の評価を下げる行い、つまりは「他者の悪口を言う」ようなものであると解釈した場合、英訳は「trash talk」になります。
自己正当化する人の心理
自己正当化とは、先に触れた通り人間関係の中でのみ見られるものではありません。もしかしたら、あなたも他人に迷惑をかけていないだけで、日々自己正当化を繰り返しているかもしれません。自己正当化の背景にはどのような心理が隠れているのか、掘り下げていきましょう。
心理1:責任の追及から逃げたい
自己正当化する人の心理として、責任の追及から逃げたいことが挙げられます。これは明らかに自分のミスである、責任を追及されるとしたら対象は間違いなく自分である、そこまで解っているからこそ、誰かに責任転嫁したいのです。 このとき、転嫁の対象は間違いなく当人より弱い立場の人間から選ばれます。あなたが組織的にその人より弱い立場にあったとしたら、それだけで“候補”に入っているかもしれません。
心理2:失敗を過度に恐れている
自己正当化する人の心理として、失敗を過度に恐れていることが挙げられます。失敗をしたとき、どうしてそれを誰かのせいにしたいのでしょう?それだけ、その人にとって「失敗」が大きなウエイトを占めているからです。 「失敗」をしたから、もう周囲から見限られてしまう。「失敗」をしたから、もう二度と立ち直れない。失敗から学んで立ち上がるという体験が極端に少ないせいで、たった一度の失敗をまるでこの世の終わりであるかのように捉えているのです。
心が折れそうな時の原因と対処!難しく考えないと上手くいく対処法とは
心理3:自分は周りより利口だと思い込んでいる
自己正当化する人の心理として、自分は周りより利口だと思い込んでいることが挙げられます。前述した通り、自己正当化をする人は、何としてでも失敗体験を回避しようとします。そのためには、何をすればいいのでしょう? 答えは簡単です。決して失敗しないような簡単なことばかりやればいいのです。その結果、中身のない成功体験ばかりが積み重なっていきます。そんな人の目に、新しい物事に挑んでミスをした人は、頭の悪い人として映るのでしょう。 自称頭の良い人はこうして出来上がっていくのです。
心理4:バレなければ何をしても構わないと思っている
自己正当化する人の心理として、バレなければ何をしても構わないと思っていることが挙げられます。仕事でミスをしたとき、本来ならすぐにでも謝罪をするのが得策なのですが、巧妙に隠しさえすれば切り抜けられると思っているのです。 そうすることで、いつかバレるのではないかとオドオドしながら過ごさなければならないこと、失敗を放置しているのだから結局成長に繋がらないこと、いざ露見したとき今以上に信用を失うことなど、近い未来にまで考えが及んでいません。 要するに「今を凌げればそれでいい」という刹那的な安楽が勝ってしまうのです。こういう考え方が根付いてしまうと、何をしても上手くいきません。目先の誘惑に「ちょっと待てよ」と手を止める自制心なくして、物事の大成はあり得ないからです。
心理5:自分のプライドを守りたい
自己正当化する人の心理として、自分のプライドを守りたいことが挙げられます。たとえば、あなたに歌手になりたいという目標があったとします。そんなあなたの口癖は「時間さえあればオーディションを受けるのに」「お金さえあればボイトレに通うのに」です。 ある日、ひょんなことからあなたは莫大な資産を手にしました。もうお金と時間に悩む心配はありません。さて、あなたは歌手への道を歩めるでしょうか?残念ながら、十中八九出来はしないでしょう。 あなたは「自分が目標に向かって頑張れないのは、時間とお金のせいだ」と自己正当化していたに過ぎないのですから。ときに私たちは、自分のプライドを守りたいがために、意図して時間とお金を浪費することさえあるのです。
プライドが高い人に共通する特徴とは?改善法やプライドが高い人診断も紹介
自己正当化のメリット
自己正当化にも少なからずメリットはあります。が、いずれも短期的なものに過ぎず、長期的なメリットは見込めません。それどころか、最終的には元々背負うはずだったものより、もっと重いものを背負う可能性さえあります。
メリット1:自分の正しさを主張する“材料”を探すことができる
自己正当化のメリットとして、自分の正しさを主張する“材料”を探せることが挙げられます。自己正当化をする人はミスをした理由、できなかった理由を外的要因に求めます。「自分の正しさを主張する」という目的はさておき、原因を追及する考察力には長けているのです。 ときには粗を探すような意図でピックアップしたポイントが、本質を突いていることだってあり得るかもしれません。とはいえ、当人の目的が「自己の正しさの主張」で完結している以上、そこから問題解決に繋がる可能性は極めて稀なのですが。
メリット2:他人より優位なポジションに立てる
自己正当化のメリットとして、他人より優位なポジションに立てることが挙げられます。前述したように、粗探し同然で取り上げたポイントが周りから「一理あるな」と評された場合、「多角的な視点を持つ人」として扱われる場合もあるわけです。 とはいえ、根底に「自分さえ守れればいい」という思いがあることに変わりはないので、その“鋭い指摘”も長続きはしません。そもそもトラブルに遭遇する度、誰かに責任を押し付けていたのでは、いたずらに敵を増やすばかりです。 南フロリダ大学の「健康に悪い職場の特徴」に関する研究によれば、不眠と最も高い相関性を持つのが職場のギスギスしたコミュニケーションであるとのこと、あなたがもし夜はぐっすりと眠りたいのであれば、むやみな自己正当化は控えた方が良さそうです。
メリット3:交渉において一時的だが大きな利益を得られる
自己正当化のメリットとして、交渉において一時的ですが大きな利益を得られることが挙げられます。自己正当化とは、裏を返せば原因を相手の中に求めるということ、つまり重箱の隅をつつくのが巧いということです。 本来なかった汚点をでっち上げることも、長所を短所のように取り上げることもできます。交渉に強ければ、当然大きな成果を上げられます。とはいえ、それはあくまで一時的なものに過ぎません。長期的な利益を望むことはできないでしょう。 あなたはそんな相手ともう一度仕事をしたいと思いますか?そんな相手と一緒に働きたいパートナーがいると思いますか?答えは言うまでもありませんね。
自己正当化のデメリット
自己正当化のデメリットについて、より具体的に掘り下げていきます。自己正当化はあくまでそれを図った人と巻き込まれた人たちの問題、素知らぬ振りをしていれば良いなどと甘い考えでいると、いつか思わぬ被害に遭うかもしれません。
デメリット1:ミスに対する恐怖心を克服できない
自己正当化のデメリットとして、ミスに対する恐怖心を克服できないことが挙げられます。失敗は受け入れて始めて、失敗体験としてカウントされます。それを「チャレンジした回数」だと捉えることで、メンタルは強くなるのです。 言い換えれば、自己正当化を図る人は、メンタルを鍛えるせっかくの機会をみすみす逃しているわけです。もちろん、失敗を自分の過ちとして受け入れない以上、似たようなしくじりを重ねる可能性も大いにあります。
デメリット2:人間関係におけるトラブルの“感染源”となりやすい
自己正当化のデメリットとして、人間関係におけるトラブルの“感染源”となりやすいことが挙げられます。結局のところ、自己正当化の裏では誰かが“犠牲”になっています。このとき、何より恐ろしいのはネガティブな感情の伝染です。 イライラしている人を傍で見ているうちに、いつの間にか自分もイライラしていた、そんな経験はありませんか?集団の中において、怒りや敵意といった感情は個人から個人へと伝染していきます。この現象は「社会的感染」と呼ばれています。 自己のプライドを守るためにとった些細な行動が、やがては集団全体の雰囲気を悪くさせてしまうのです。
社会的感染の厄介な点は、“感染源”から距離を置く以外にまともな回避策がないところです。相手が同じ職場の人間であれば、離れるにしても限度があります。 いざ自分がイラッとしたとき、「これは本当に自分から生じた苛立ちなのか。他人の苛立ちが移っただけじゃないのか?」と考えられるようになりましょう。言うは易く行うは難し、こればかりは瞑想や運動の習慣化によってメンタルを鍛えていく他ありません。
デメリット3:健康被害が出る
自己正当化のデメリットとして、健康被害が出ることが挙げられます。前述した通り、他人を顧みない自己正当化は社会的感染を引き起こし、社会的感染は不眠を始めとする健康被害をもたらします。 確かに「明日もあのギスギスした職場に行くのか…」と考えるだけで眠れなくなりそうです。ここで言う「健康被害」とは不眠のほか、頭痛、腰痛などを含みます。意外なことに、身に覚えのない腰痛の原因はストレスではないかとする説があるのです。 「最近職場の雰囲気が悪い。しかも早退や病欠も増えている…」と感じているあなた、もしかしたらその原因は自己正当化する人という“感染源”にあるかもしれません。
自己正当化する人の対処法
自己正当化を図る人に対処する上で心がけておいてほしいのは、目的をはき違えないことです。日頃当事者の身勝手な自己正当化に振り回されているからといって、相手をやり込めてやろうなどと考えてはいけません。 前述した通り、人の敵意は伝染します。あなた発の敵意が、まるでドミノ倒しのように全く関係のない人を傷付けてしまう可能性さえあるのです。自己正当化する人とのやりとりで頭に血が上りそうになったら、社会的感染のことを思い出してください。
対処法1:感情的にならずに問い詰める
自己正当化する人の対処法として、感情的にならずに問い詰めることが挙げられます。あなたに非はないのですから毅然とした態度で臨むのはもちろんとして、大切なのは「感情的にならないこと」です。 感情的になると、相手が「なにムキになってるの?」と感情を露わにしたこと自体に文句をつけてくる可能性があります。それが周りに人のいる状況ともなれば、怒鳴っている方が悪印象を持たれかねません。 あなたは「大人だから」「社会人だから」感情的になってはいけないのではありません。はっきり言って、自分に言い聞かせるメッセージとしてその理由はぬる過ぎます。あなたは「相手に主導権を握らせないために」感情的になってはいけないのです。
対処法2:人格を批判するような否定はしない
自己正当化する人の対処法として、人格を批判するような否定はしないことが挙げられます。自己正当化する人に限らず、人は人格を否定されたらより自己を正当化したい気持ちを強めてしまうものです。 また、「そういえばあのときもこうでしたよね」と過去の似たような事例をほじくり返すことも、相手の神経を逆撫でするだけなので控えましょう。 ただ、覚えておいてほしいのは、結局あなたがどれだけ言動に細心の注意を払ったとしても、相手が怒るときは怒るということです。中には威圧を目的に意図して怒る人だっているかもしれません。そのための心の準備はしておきましょう。
対処法3:信頼できる人に相談する
自己正当化する人の対処法として、信頼できる人に相談することが挙げられます。たとえば職場において、あなたが自己正当化する人との関係に悩んでいるのだとしたら、あなたの周りにも同じ原因で悩んでいる人がいるはずです。その人たちからどう接しているか聞きましょう。 情報収集の過程で、もしかしたらあなたが「自己正当化ばかりする狡いヤツ」だと思っていた人の意外な一面を知る可能性もあります。当事者と話し合いをする場合、一人で心細ければ同席を依頼するのも良いでしょう。 ただし、そのときはなるべく中立的な立場の人を選んでください。あなたにとって身近過ぎる人を同席させれば、図らずも2VS1の状況が生まれてしまい、返って場がこじれることになります。
自己正当化と自己肯定の違い
自己正当化と自己肯定の違いは、結論から言えば「前に進むためのエネルギーとなるかどうか」です。自己正当化は前に進むエネルギーになりません。むしろ、チャレンジなどさせるものかとあなたを現状に留めようとします。 一方、自己肯定は前に進むエネルギーになります。自己肯定と言うと「俺はやれる! 俺ならできる!」とひたすらポジティブなメッセージを自らに言い聞かせるシーンがイメージされがちです。 が、自己肯定とはそういうものではありません。自己肯定とは「まあこれくらいでいいんじゃない」という感覚です。こう言うと「妥協」のように思われるかもしれませんが、これはあくまで良い妥協、前に進むための妥協なのです。
悪い妥協が「まあこれくらいでいいんじゃない。だから諦めよう」であるのに対し、良い妥協は「まあ今はこれくらいでいいんじゃない。だから次もっと良くするにはどうしたらいいかを考えよう」となるのです。 「今は」の部分が重要です。今の自分に納得できてようやく私たちは前へ進もうという気持ちになるのです。
自己正当化する人か診断!あなたは自己正当化する人?
ここまで読み進めたほとんどの方が「自己正当化する人って何て傍迷惑なんだ!」と思っていることでしょう。が、周りから見ればあなたもそのうちの一人に含まれているかもしれません。 自分が自己正当化する人か、チェックしてみたいと思いませんか?そんなあなたのために、診断テストをご用意しました。とはいえ、何個「はい」があったからあなたは100%自己正当化する人だと決定づけるものではありません。 ただ「はい」が多ければ多いほど、周囲から「自己正当化する人」だと思われている可能性は高いと言えます。 質問は全部で10問です。「はい」か「いいえ」でお答えください。 1.チームでの仕事が失敗に終わったとき、個人に原因を求めてしまう。 2.自分の感情や思考が周りに読み取られることはないと思っている。 3.性格が合わない人とはなるべく関わりを持ちたくない。 4.相手のためを思ってさえいれば、嘘をつくことは悪いことではない。 5.自分を良く見せたいがために、他人の評価を下げようとすることがある。 6.失敗の原因追及は無駄だと考えている。 7.自分のやり方に自信があり、他人のやり方から学ぶことはほとんどない。 8.困っている人がいても、他の誰かが手を差し伸べるだろうと考えてしまう。 9.責任のある仕事を任されると、プレッシャーしか感じない。 10.運動や健康的な食生活など、プラスになる習慣が長続きした試しがない。
自己正当化する癖を治すために注意すべきこととは?
自己正当化する癖を治す方法として、おすすめしたいのは「自己正当化ログ」をつけることです。これまで説明してきた通り、他人にのせいにすることだけが自己正当化ではありません。 時間がないせい、お金がないせい、環境が悪いせい…とどのつまり、人によって何に原因を押し付けがちであるかが異なるのです。自己正当化の癖を治すためには、この「傾向」を把握しなければなりません。そこでおすすめするのが「自己正当化ログ」です。 簡単に説明すると「ああ、自己正当化したいっ」という衝動に駆られた瞬間を記録するのです。自分はどんな感情・思考からどんな原因をどんな対象に押しつけようとしているのか、できれば感じた瞬間に記録してください。
難しければ一日の終わりに最低3つ書くなど、自分にとって習慣化しやすいルールを設けましょう。これを続けることによって、自己正当化のトリガーが見えてくるようになります。 この条件を満たしたとき、自分はこういう対象に原因を求めたくなる…そういった傾向を理解できれば、対処は格段に易しくなります。「おっ、この感じは…今、トリガーに指がかかっているな」と自らを客観視しやすくなるからです。 ぼんやりしたものを放置していても、それが解消されることはありません。漠然とした仕事のストレスを感じているAさんと、上司から理不尽な要求をされて上手く断れなかったことにストレスを感じているBさんとでは、どちらが事態の早期解決に向かうかは明白でしょう。
臭い物に蓋をしても返って苦しみは増すばかりなのです。
人は皆自己正当化“予備軍”である
原因を押し付ける対象が他人であるか、その他であるか、そこに違いがあるだけで、人は誰しも自己正当化をする可能性を持っています。「これだからすぐ自己正当化するヤツは…」と愚痴っているあなたも、あくまで自己正当化“予備軍”に過ぎないのです。 だからこそ、私たちは日頃から自分がそうなっていないかを自問しておく必要があります。でなければ、自己正当化する人と話し合いになったとき、「あなただってあのときこうだったじゃないか」と指摘される可能性があります。話し合いの場は一気に口論の場と化すでしょう。 自己正当化ログを改善策ではなく予防策として使うのも良いでしょう。「〇〇のせいにしたい!」という欲求が湧くことを抑えることはできません。ただし、湧いたそれを巧く処理することはできます。そのことを胸に留めておいてくださいね。